癌(がん)の部位は薬物療法の判断基盤にならない
腫瘍のできた部位に基づく癌(がん)薬物療法はいずれ時代遅れになることを示す研究結果が、医学誌「Journal of Pathology」6月号に掲載された。
米ワシントン大学サイトマン癌センター(セントルイス)のHoward McLeod氏は「解剖学的な点に比重を置いた現在の治療法よりも、腫瘍の特性に着目した方法が優れていることが確かめられれば、癌専門医はもう自分が大腸癌専門だ、乳癌専門だなどとは言えなくなるだろう」と述べている。
研究チームは、大腸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、脳腫瘍、メラノーマ(黒色腫=皮膚癌)およびリンパ腫の8種類の癌からの255検体を分析した。この結果、腫瘍の部位は、標準的な抗癌薬イリノテカン(※日本で開発されたトポイソメラーゼ阻害薬)との相互作用には無関係であることがわかったという。
従来の癌治療では、体のさまざまな部位の癌に対してそれぞれ異なる薬物療法が確立されている。今回の研究結果は、これまでの方法に替わり、抗癌薬に対する腫瘍の応答性に基づいて、最も優れた効果をもたらす薬剤を用いた治療を行なう必要があることを示している。McLeod氏によれば、異なる部位の腫瘍に対する1つの薬剤の効果を分析した研究は、今回が初めてだという。