適度な飲酒の健康効果に疑問
適度な飲酒は心疾患予防に効果的ということが過去数々の研究で示されてきたが、これらの研究の多くには不備があることが、オーストラリア、カナダおよび米国の研究者らのグループによって指摘され、医学誌「Addiction Research and Theory」5月号発行に先立ちオンライン版に掲載された。
研究グループは、飲酒しない人の多くが、健康の衰え、虚弱体質、薬の服用、障害などの理由で禁酒をしているのではないかと疑い、心疾患を含むあらゆる原因による死亡と飲酒との関係を調べた過去の54の研究を分析した。この結果、長期間飲酒をしていない人のみを非飲酒群としていたのは54研究中7つのみであった。この7研究では、非飲酒群と適度な飲酒をする群との間に死亡リスクの差は認められなかった。
グループの一人、カナダ、ビクトリア大学依存症研究センターのTim Stockwell氏は、適度な飲酒が冠動脈性心疾患を予防すると広く信じられており、これがアルコールに関する規定や医師による患者指導に大きく影響していると指摘。過去の研究結果は見かけだけのものである可能性があるため、飲酒しない人に軽度の飲酒を勧めるのには慎重になる必要があると述べている。
ただし今回の研究では、これまでの研究で正しく実施されたものが少なすぎるため、軽度の飲酒が健康によいという考えを否定する結論にまでには至っていない。