定期的な運動がアルツハイマー病発症を遅らせる
少なくとも週3日軽度の運動を続ければ、高齢者に見られるアルツハイマー病や他の認知症の発症リスクが30〜40%低下することが、「健康に関する共同研究センター(Group Health Cooperative’s Center for Health Studies:シアトル)」所長のEric B. Larson博士らの研究で明らかにされ、医学誌「Annals of Internal Medicine」1月17日号に掲載された。
Larson博士らは1994〜2003年にかけて、65歳以上の男女合計1,740例を対象に、健康、身体および精神機能、生活習慣を評価した。研究開始時には全例とも、認知症と診断されておらず、自宅で介護を要する状態でもなかった。2年に1回検診を受けさせ、運動習慣、身体能力、記憶力、注意力、集中力を評価するため問診を実施した。
検討期間の6年間で、アルツハイマー病の発症例は107例、その他の認知症を来した例が51例、死亡は276例であった。研究開始時に15分間の運動を週3日以上定期的に行っていた人は、それより運動量が少ない人に比べ認知症の発症リスクが32%低かった。同博士らは、定期的な運動はアルツハイマー病や他の認知症の発症を阻止することはできないものの、長期にわたり発症を遅延させる可能性があると述べている。
また、研究開始時に体力が最も低いレベルにあると判断された人が定期的に運動することによって、体力がこれらの人たちよりも高かった人に比べ認知症発症のリスク低下率が高かった。ただし、今回は運動強度などを評価しておらず、Larson博士らは今後の課題として、血流量や酸素運搬量を改善し、脳細胞の喪失を減少させるための適度な運動強度および運動時間を明らかにすることを挙げている。
退役軍人局医療システムの神経科学者で、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校アルツハイマー病研究センター副所長のGreg M. Cole氏は「今回の研究では、アルツハイマー病発症を遅らせる方法として、患者がすぐに取り入れられる運動もその1つであることが明らかにされた点で、大きな成果を収めた」との見解を示している。