ガムを噛むと術後の回復が早くなる
結腸の腹腔鏡下手術を受けた患者が、ガムを噛むことによって術後の入院期間を短縮できることが、新たな研究で明らかにされた。腹腔鏡下手術とは、局所をわずかに切開し超小型ビデオカメラの監視下で施行する手技であり、従来の手技よりも術後の回復が早く、痛みも少ないことが知られている。
米ウェスタン・ペンシルベニア病院(ピッツバーグ)の腹腔鏡下外科医James McCormick博士は、それでもなお患者は早く退院し日常生活に戻ることを望んでおり、ガムを噛むという簡単な方法でそれが達せられることが明らかになったとしている。先ごろ、サンフランシスコで開かれた米国外科学会(AOS)年次集会で発表された。
McCormick博士らは、選択的結腸切除術を施行した患者102例を被験群と対照群とに割り付け、対照群には術後の標準内容の栄養摂取をさせ、被験群にはこれに加えてガムを噛ませた。その結果、ガムを噛ませた被験群は対照群よりも入院期間が1日短かったという。
同博士によれば、ガムを噛むことにより、術後一定期間にみられるイレウス(腸閉塞)が予防または軽減されることが考えられるという。さらに、この効果を説明する科学的論理がいくつか挙げられ、最も有力な説が「見せかけの食事」の概念であるという。
「通常、食事の時間として15分間は、座って噛んで飲み込むという動作を繰り返す。ガムを噛むということはこうした動作をよい方向に刺激するものであり、体自身が正常であると感じるのが早いほど、その活動も正常に戻るのが早いと考えられる。したがって、退院も早まることになる」と説明する。
術後に発生し、入院を延長させる主な原因としてイレウスが挙げられるが、米国におけるイレウスに関わる医療費は年間10億ドル(約1,150億円)にも上る。