早期退職者の寿命は予想に反して短い
定年前に早期退職し、リラックスした生活を送り、長生きをする。一見理想的に見える人生の過ごし方のパターンだが、健康が許すならば、もう少し従来通りの刺激のある生活を送ったほうが、寿命の点からはよさそうだ。
55歳で退職すると、その後10年間に死亡するリスクが65歳で退職した人に比べて有意に高いことが、石油会社のShell Oilによる調査で明らかになり、英医学誌「British Medical Journal」10月22日号に掲載された。同社では、全従業員を対象に、規定評価の一つとして退職者の追跡調査を行っている。
報告者である同社Shell健康サービス部門のShan P Tsai氏によると、今回、1973〜2003年に退職した元従業員3,500人以上を対象に評価したところ、60または65歳で退職した人は死亡率が高くないことがわかった。
一般には、退職が健康にもたらす肉体的、精神的な有益性を踏まえると、早期退職により寿命が延びると考えられてきた。しかし、今回の結果はこれを否定するものであり、55歳で退職した人では65歳で退職した人よりも死亡率が37%高かった。
この結果に対して、Shell Oil社広報部は「55歳で退職した人は、退職時に健康上何らかの問題がすでに存在していたためではないか」との見解を示している。また米国立加齢研究所(NIA)疫学、人口統計学・生物統計学部長のJack Guralnik博士はこの見解に同意を示しており、「早期退職者のようなグループには、健康上の理由により退職する人が相当いる」点を考慮すべきであると述べている。
しかし、Tsai氏は「そのような健康上の影響を取り除かなくても、65歳時退職者では55歳時退職者に比べ生存率は有意に高かった」と述べている。
カナダの「活力ある高齢化に関する国際協議会(International Council on Active Aging)」の最高責任者Colin Milner 氏は、健康上の問題が生存期間に及ぼす影響は避けることができないとした上で、退職時に仕事の重要性を過小評価している人が多い点を指摘。退職後に新たに何かを始める人は生活を楽しみ、健康も維持できることから、退職後の生活を活気あるものにすることが大事であるという。