ホメオパシーの効果はプラセボ効果と同一
ホメオパシー(同種療法)の臨床的有益性は、プラセボ(偽薬)効果と同じものに過ぎないとする研究が報告された。ホメオパシーとは、代替医療の一つで、疾患や症状をもたらす原因となる物質と同種の、自然界に存在する植物や鉱物、動物由来の物質(レメディー)を高度に希釈して少量投与し、人体のもつ自然治癒力を喚起させることによって治癒をもたらせる治療法である。
ホメオパシーは、英国、フランス、ドイツなどで盛んに用いられており、専門医は全世界で10万人、5億人が治療を受けているといわれる。レメディーは3,000種類以上あるが、実際に治療に用いられるのは、ヒ素、硝酸銀、トリカブト、ミツバチ、イカの墨、牛肉の腐敗した液など200〜300種類で、大部分が丸剤、錠剤、顆粒の経口薬として用いられる。
英医学誌「Lancet」8月27日号に掲載された研究報告では、英ブリストル大学社会医学部のPeter Juni博士らは、呼吸器感染症、手術、麻酔治療などの領域において、ホメオパシーによるプラセボ対照無作為化臨床試験110件と、従来の治療法を用いた臨床試験110件について、疾患および転帰の型をマッチさせ比較検討した。
その結果、ホメオパシーの効果はプラセボ効果と矛盾しないものであることが判明した。この「状況効果」とも呼ばれる効果は、患者と医師との間にみる強力な連帯感、治癒への信念、プラセボ効果や疾患の自然歴との組み合わせによってもたらされるものであるという。
Juni博士は「今回の知見は、ホメオパシーに用いられるレメディーには生物学的有益性はないこと示している」と述べてるとともに、「重篤な症状に対しては、従来の治療法にホメオパシー療法を併用することに問題はないが、一つの治療選択肢として用いるとなれば、きわめて大きな問題をはらむ選択である」と指摘する。
今回の研究報告に対して、他の専門家から、ホメオパシーに用いられるレメディーに特異的効果がないとする考えは科学的に擁護できない、研究はホメオパシーに対しバイアスがかけられたものである、との2つの主要な異議が唱えられている。