IQの高い人が晩年幸福であるとは限らない
お金で幸せを買えないことは誰もが知るところだが、知能でも幸せは保証されないことを示す研究が、英国医師会誌「BMJ」7月16日号に掲載された。
この研究は、英エジンバラ大学のAlan J. Gow博士らが、1921年生まれのスコットランド人550人を追跡調査したもので、このテーマについての最も長期にわたる研究の1つである。調査への参加者は11歳時と79歳時に知能テストを受け、さらに「人生の満足度」テストも受けた。
「人生の満足度」テストは広く用いられているもので、例えば「ほとんどの点で私の人生は理想的なものに近い」、「もし人生をやりなおせるとしても、ほとんど何も変えない」などの質問に対して、「大いに同意する」から「全く同意しない」の範囲で答えるものである。その結果、80歳時点での人生への満足度と、11歳あるいは79歳でのIQ(知能指数)の相関関係は統計的に有意でなく、知能が幸福とは関係しないことが示された。
現代社会では精神的能力が高く評価されており、この結果は驚きをもたらすかもしれないが、Gow博士は「人生を乗り切るのに十分な知能さえあれば、それ以上は重要ではないのかもしれない」と述べている。
知能には、よい仕事を得るための手段となるなどのプラス面と、別の生活スタイルがあることに気付いてしまう、より大きな業績を求めてあがくなどのマイナス面があり、どちらも幸福感に影響を与えるが、専門家の1人は、知能以外の多くの要因が幸せかどうかに大きく影響し、知能は単に小さな要素の一つにすぎないと述べている。結局、歳をとったときの幸福感に影響するのは生活の質(QOL)で、例えば寝たきりで歩き回ることできなければ、それが決定的要因になる。
幸福かどうかは医学的にも重要な問題でもある。世界保健機関(WHO)によれば、2020年までに、うつ病が早死にの第二の要因になるという。