鍼(はり)治療で変形性関節症の症状が短期的に改善
鍼(はり)治療で、変形性関節症(OA)の疼痛緩和および関節機能の短期的な改善が得られることが、医学誌「Lancet」7月9日号に掲載の新たな研究で明らかにされた。現在、鍼治療の実際の効果を示す科学的根拠はごくわずかしか得られていない。しかし、最近、治療に用いられる鎮痛薬の心臓発作や脳卒中のリスクが問題視されており、それらに代わるものとして、多くのOA患者が古来中国の伝統療法に転換している。
独Charite大学(ベルリン)医療センター・社会医学、疫学および医療経済研究所副管理部長のClaudia Witt博士らは、OA患者を対象に鍼治療の効果を検討、「鍼治療によって、有意かつ臨床上重要な短期的な効果が得られた」という。
Witt博士らは、OA患者294例を対象として、鍼治療群または対照群に無作為に割り付け、鍼治療群に対して8週間にわたって12セッションの治療を実施し、その後1年間追跡した。その結果、「8週間の鍼治療を実施した患者は、わずかに実施した患者またはまったく実施しなかった患者よりも、疼痛が有意に緩和し、関節機能が改善した」という。ただし、長期にわたる効果は認められなかった。
米カルフォルニア大学ロサンゼルス校リウマチ学臨床研究センター所長でCarl M. Pearson療法教授のDaniel E. Furst博士は、鍼治療の効果が持続しないことに不思議はないとした上で、効果を維持するには治療を長期間継続する必要があるという。一方、英オックスフォード大学疼痛研究部門のAndrew Moore博士らは、「現在得られている鍼治療の効果を示す根拠はごくわずかであり、その必要性は未だ明らかではない」との見解を示している。