早期肺癌(がん)を検出する喀痰(かくたん)検査
痰(たん)に含まれるDNAを分析する簡単な検査で、肺癌(がん)を診断できる可能性が米メリーランド大学の研究グループによって示され、医学誌「Clinical Cancer Research」1月15日号に掲載された。
この検査は、痰に含まれる細胞に、腫瘍抑制因子とされる2つの遺伝子(HYAL2およびFHIT)の欠失があるかどうかに注目したもので、「蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)」と呼ばれる方法を用いる。蛍光色素で標識した1本鎖DNAを用い、特定の遺伝子の相補鎖に結合させた後、特殊な顕微鏡で蛍光シグナルの有無を調べることで欠失があるかどうかわかる。
初期試験では、腫瘍細胞でこの2つの遺伝子が欠失している1期の肺癌患者の76%が特定された。これに対し、標準的な喀痰細胞検査(細胞構造の変化を調べる検査)で特定できた患者は46%であった。
同大学病理学助教授Feng Jiang博士は「痰で認められる遺伝子異常が肺腫瘍での遺伝子異常を反映しており、遺伝子の変化が、細胞の形態学的変化よりも先に生じることが示された」と述べ、この2つの遺伝子が、肺癌を非侵襲的に早期に診断する信頼性の高いバイオマーカー(生物学的標識)として極めて有望であるとしている。
FISHは極めて安価で簡便な診断ツールであり、この方法は肺癌患者の治療への反応性、疾患の進行、再発などを調べるのにも有用であるとのこと。