天才と凡人の違いは脳の成熟パターンにあり
知能の高い子どもと平均的な子どもとの差は、脳の大きさではなく、発達過程での脳の変化に関連していることが示唆された。この研究は米国立精神保健研究所(NIMH)小児精神医学科のPhilip Shaw博士らによるもので、英科学誌「Nature」3月30日号に掲載された。
Shaw氏らは、健康な4〜29歳、約300人を対象に、脳スキャンを利用して幼児期から青年期にかけてさまざまな時点での大脳皮質の厚さを分析した。さらにIQテストを行い、知能が「非常に高い」「高い」「平均」という3つの群に分類した。この結果、年齢が上がるに従って最終的にはみな大脳皮質の厚さが減少したが、そのパターンは各群の間で差がみられたという。
「非常に高い」群では男女ともに最初は比較的皮質が薄く、速いペースで厚さを増していき、11歳前後でピークに達した後、青年期の早い段階で急速に薄くなった。これに対し「平均」群では、皮質の厚さが子ども時代全体を通じて一定の速さでゆっくりと減少するパターンと、最初わずかに増大して7歳〜8歳でピークに達した後、一定速度で減少するパターンの2種類がみられた。知能が「高い」群では、ほかの2群の中間的なパターンが認められたが、どちらかといえば「平均」群に近かった。性差はみられなかった。
この結果から、Shaw氏らは、知能はある年齢での大脳皮質の量ではなく、子ども時代から青年期にかけての大脳皮質の成育パターンに関連すると結論づけた。「知恵がよく回る子どもは大脳皮質も活発である」という。
大脳皮質の変化が意味するところは不明だが、脳の成熟過程では、使われていない脳細胞やニューロン(神経細胞)、神経回路が削除され、思春期により効率のよい脳になるといわれている。大脳皮質が薄くなる理由はこれで説明できるかもしれないと、Shaw氏は述べている。