ステント留置で末梢動脈閉塞患者の歩行能力が改善
脚の動脈閉塞(末梢動脈疾患、PAD)を来した患者の歩行能力の改善には、バルーンによる血管形成術よりもステントを用いた方がよい結果の得られることが報告された。オーストリア、ウィーン医科大学の医師らによる研究で、米医学誌「New England Journal of Medicine」5月4日号に掲載された。
PAD治療でのステント(血管を開いた状態に保つ円筒形の金属メッシュ)の使用は、破損などの問題が相次いだことから減少傾向にあった。しかし今回の研究では、血管形成術を受けた53例に比べ、新型のステントを浅大腿動脈に留置した51例の方が長い距離を歩くことができたという。
この研究では、ニチノール(ニッケルとチタンの合金)製の2種類のステントを使用した。いずれも米国Guidant Corp社製のもの。米国ではPADを患う高齢者が増加しており、現在ほかに少なくとも2社の米国企業が末梢(脚)動脈用ステントの試験に出資している。PADになると疼痛その他の問題が生じるほか、最悪の場合は脚の切断に至ることもある。
米スタンフォード大学医学部インターベンショナル・ラジオロジー(IVR)主任のLawrence Hofmann博士は、今後のPAD治療を変える知見と期待する一方で、今回の結果は純粋な成功とはいえないと述べている。ステント治療を受けた群は留置後6カ月および1年のいずれにおいても長い距離を歩くことができたものの、PADが悪化して新たな処置が必要となった比率は血管形成術を受けた群と同じであった。また、ステント治療を受けたうち3例では、後にバイパス手術が必要になった。
他の専門家は、ステント治療群の患者の一部で症状悪化を止めることに失敗している点を懸念している。この研究が比較的短期間しかカバーしていない点も指摘し、効果が長期間持続するのか、ステント破損による問題が生じることはないのかという疑問を呈している。また、Hofmann氏によれば、ステントのわずかな設計の違いによって破損などが生じるリスクが大きく左右されるため、ステント全般について明確なことはいえないという。