アマルガム補填材の安全性を示す新しい研究で議論再燃
アマルガム歯科充填材は安全とする欧米での2件の研究が、米国医師会誌「JAMA」4月19日号に掲載された。アマルガム充填材の安全性に関する議論が再燃しそうだ。
アマルガム充填材には、水銀が50%近く含有される銀以上に水銀が含まれている。他の材料と混ぜ合わせることにより水銀は被包化され、健康に及ぼすリスクはないと歯科専門家が主張する一方で、消費者団体は神経毒性を有する水銀は、水銀蒸気(ガス)の形で漏れ出し、血流に入り込むと主張している。
米ハーバード大学医学部(マサチューセッツ州)神経学・環境衛生学教授のDavid Bellinger氏らの研究では、6〜10歳の小児534人が無作為に割り付けられ、半数がアマルガム、半数が樹脂複合材を用いて、平均15箇所の充填治療を受けた。5年間の追跡調査で、小児の尿から高レベルの水銀が検出されたが、定期的に実施した知能指数(IQ)と腎機能検査の結果、終了時点でアマルガム群においてわずかにIQの低下が認められたものの、2群間に統計的有意差は認められなかった。
一方、ポルトガルの研究では、米国の研究と同様、8〜10歳の小児507人がアマルガム群と樹脂群に無作為に割り付けられ、アマルガム群では平均18.7箇所、樹脂群では21.3箇所の修復治療が行われた。7年間にわたり、定期的に記憶力、集中力、運動能、神経伝道速度が測定された。同研究でも、2群間に統計的有意差は認められなかった。
米ピッツバーグ大学医学部(ペンシルバニア州)のHerbert Needleman博士は、同誌の解説で、アマルガム充填材に使用されている量よりも高用量の水銀に毒性があるのは周知の事実で、低用量でも悪影響があることは当然疑われると指摘し、水銀が多発性硬化症やアルツハイマー病の危険因子である可能性を示唆する研究があると述べている。また神経毒性を検討するにあたり、今回の研究は期間が短すぎる点にも言及している。
水銀含有の充填材の全面禁止を目指す消費者団体Consumers for Dental Choice顧問のCharlie Brown氏は、研究には重大な限界があり、アマルガム充填材の安全性は証明できないという。ポルトガルの研究では、魚食の多い小児の食事に含まれる水銀含有量がコントロールされていないこと、また研究主任が米国歯科医師会(ADA)にアマルガム充填材の安全性を証言するなど、研究開始前にアマルガムは安全だと決めていたのではないかとの懸念を示している。
米食品医薬品局(FDA)は先ごろ、今年(2006年)9月に、歯科治療用アマルガムの安全性と神経毒性の可能性について公聴会を開くと発表した。