骨粗鬆(しょう)症に下垂体ホルモンが関連
下垂体由来の卵胞刺激ホルモン(FSH)の増加が、閉経後に女性の骨量が低下する一因である可能性が示され、細胞生物学誌「Cell」4月21日号で報告された。
この知見は、エストロゲンを使用せずに骨量低下の治療および予防ができる可能性を開くという。エストロゲン補充療法は、特にプロゲスチンと併用した場合、乳癌の発症リスク増大に関連するため、理想的な治療法とはいえない。
骨粗鬆(しょう)症は骨がもろく折れやすくなる疾患で、米国で800万人、世界で約4,500万人の女性が罹患している。健康な骨では形成と吸収(破壊)とのバランスが保たれているが、閉経後はこのバランスが崩れ、骨量が低下する。これまでは閉経後のエストロゲン減少が唯一の原因と考えられていたが、動物実験ではエストロゲンが減少しても必ずしも骨量低下は生じなかった。
米マウントサイナイ医科大学(ニューヨーク)医学生理学教授のMone Zaidi博士らは、約2年前、FSHに類似する甲状腺刺激ホルモンが骨の再形成に影響を及ぼすことを発見した。FSHは、卵胞の成長を促し、卵巣からのエストロゲン分泌を促進する働きをもつホルモンである。加齢に伴いエストロゲンが減少すると、エストロゲン濃度を保とうとするフィードバック機構が働いて、下垂体からのFSH分泌が増大する。今回の研究では、FSHまたはFSH受容体を欠損したマウスでは、卵巣からエストロゲンが分泌されなくても骨量が低下しないことがわかった。
Zaidi氏によると、次のステップは抗体を用いて血液中のFSHを除去し、骨量低下を予防できるかどうかを調べることだという。北米更年期学会(NAMS)の委員の1人、J. Christopher Gallagher博士は「これまで閉経後の女性のFSH上昇は見過ごされてきており、この知見は興味深い」と述べている。