ガーデニングの効用
上司の髪毛を引きぬくことはできないが、花壇の雑草ならば引きちぎっても大丈夫。ウェイトトレーニングをする気にはならないかもしれないが、土袋を運んだり、手押し車を押したりすることはできる。暖かくなり、多くの人が庭に出る季節になったが、ガーデニングに伴うさまざまな動きには心身両面へのプラス効果が山ほどある。
米ノースウェスタン記念病院ウェルネス研究所(シカゴ)のJulie Roth博士は、その中でも突出するのは運動による効果だと指摘する。「ガーデニングは楽しい作業で、カロリー消費の良い手段であり、庭仕事で1時間に250〜500カロリー消費されることが複数の研究で明らかになっている」という。
また、米バージニア工科大学(バージニア州)園芸学部名誉教授のDiane Relf氏は、木のせん定は適度な速度でウォーキングするのとほぼ同等の運動になるという。同様に、落ち葉かきはサイクリングやウォーターエアロビクスと、手押し式芝刈り機での芝刈りや庭を耕すのはプールで何往復か泳ぐのと同じ運動量になる。
ガーデニングは、身体的な運動以外に心の平穏ももたらし、それが健康面でもプラスに働く。Relf氏は、メモリアル・スローン・ケタリングMemorial Sloan-Kettering癌(がん)センター(ニューヨーク)の研究に触れ、乳癌から回復途上の女性にとって、庭を歩くことは集中力の回復や抑うつの軽減に役立つと述べている。
また、デスクワークの1日の最後に屋外で時間を過ごすことで得られるストレス解消効果も過小評価できない。Relf氏はガーデニングで気持ちが落ち着く理由として、植物が目を楽しませる、進化の結実に人が反応する、何かを育てるという本能を満足させるなどを挙げる。そして、優秀なガーデナーにはカラフルで芳しい花や、美味しい果物や野菜という褒美が与えられ、最後には、新鮮な果物や野菜を摂取することでまた別の効果がもたらされることになる。