癌(がん)治療後の生殖能維持のための新しいガイドライン
癌(がん)や、化学療法、放射線療法などの治療が原因で、癌生存者では受胎や妊娠の維持が困難になることがあるが、米国癌治療学会(ASCO)は、癌治療が必要な患者の生殖能を維持させるための新しい臨床ガイドライン(指針)を学会誌「Journal of Clinical Oncology」6月20日号で発表した。
新しいガイドラインでは下記のことが奨励されている:
・妊娠可能年齢の患者には、診断後、可能な限り早い時期に治療による不妊リスクについて伝える。
・医師は、患者に治療による不妊リスクがあるか否かを識別し、治療開始前に患者と不安や生殖能維持に対する考え、治療の選択肢や生殖能維持処置のタイミングについて話し合う必要がある。
・生殖能維持に関心があり、その対象となる患者には、意思決定や治療計画を問い合わせることのできる生殖医学専門医を紹介する。
ガイドライン執筆者で、米フレッド・ハッチンソンFred Hutchinson癌研究所(シアトル)のStephanie Lee博士は「医師も患者も、治療による生殖能へのリスクを可能な限り早く測定すべきだ。なぜなら、生殖能維持の処置は治療開始前に実施する必要があり、その多くは時間を要するからだ」と述べる。
同博士らは、生殖能維持の処置で最も成功率の高いのは、女性では胚の低温保存、男性では精子の低温保存だと結論付けている。いずれも後日使用するために、胚の低温保存法では卵子を採取して体外受精した後に、また精子の低温保存法では精子を凍結保存する。