音痴を科学的に解明
失音楽症、いわゆる音痴の人では脳の右側の活動に異常がみられることが、カナダおよびフィンランドの研究者らによって明らかにされた。医学誌「Annals of Neurology」8月29日号に掲載された。
米カルフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)記憶・加齢研究センター神経学助教授のJulene K. Johnson氏は「脳のメカニズムの面から、先天性の音痴である成人が、本人が実際とは異なる音程であると感じる理由が説明されることを示唆するものとして、この研究は他に類をみないものである」という。
モントリオール大学のIsabelle Peretz氏らが実施した今回の研究では、脳波検査(EEG)を実施して、さまざまな領域の脳細胞が音に対してどのように応答するか評価した。音痴の人8例および正常音程の人10例を対象として、異なる音程を各音100ミリ秒ずつ連続して聴かせた。その結果、音痴の被験者は、音程の差がわずかであるとその変化を感じ取ることが困難だった。さらに、音痴の被験者には脳の右側に異常が認められた。
Johnson氏は「今回の結果から、先天性の音痴であっても一次聴覚皮質は損傷されておらず、音程認識が困難になるのは生後、聴覚処理の流れ(一次聴覚皮質の外側)で生じるものである」としている。
専門家らは「音痴と失読症などの言語障害や読字障害との関連が認められており、今回の研究結果は、聴力、言語能力および読字に関する症状の診断法や治療法に寄与するものと考えられる」と評価している。また、治療選択肢の可能性を得るきっかけとなり、種々の治療法が脳に対してどのような影響を及ぼすかを評価する道を開くものとして期待されている。