前立腺癌(がん)を予測するツール
前立腺特異抗原(PSA)の検査結果単独に比べて、より正確に前立腺癌(がん)の発症リスクが予測できるという「リスク計算ツール」が開発された。米テキサス大学保健科学センター泌尿器科教授のIan M. Thompson博士らが開発したこのツールは、PSA値のほか、年齢、人種、家族歴、過去の生検所見、直腸指診(DRE)所見からリスクを評価するもので、オンラインで利用できる。この方法は、医学誌「Journal of the National Cancer Institute」4月18日号で報告された。
現在、米国の高齢男性の50%が定期的にPSA検査を受けている。PSA値はリスクが「高い」か「正常」かの白黒をつける指標とされることが多いが、実際にはPSA値に応じて徐々にリスクが増大するもので、Thompson博士によれば、PSA値をほかの因子と組み合わせて判断する方が有用であるという
Thompson博士らは、前立腺癌予防に関する大規模試験に参加した健康な男性約5,500人のデータを集めた。7年間、全員が年1回のPSAおよびDRE検査を受けたほか、期間中に最低1回の前立腺生検を受けた。期間終了までに、対象者の約22%が前立腺癌を発症し、5%が高悪性度の癌を発症した。
蓄積されたデータを独自の「統計リスクモデル」に入力した結果、前立腺癌の家族歴があったりPSA値やDRE所見に異常がみられたりすると、リスクが大幅に増大することがわかった。人種や年齢もこの数式に組み込まれ、黒人および高齢男性ではリスクが比較的高い。過去の生検結果が陰性であった場合、リスクが低下することもわかった。この計算ツールで、リスクをより正確に予測できるという。ただし、この方法では重篤な癌とそうでない癌とが区別されていないため、不十分であるとの指摘もある。
同誌の同じ号では、前立腺癌の新しい治療法を評価するには、PSA値の変化を追跡するのが早くて正確であることを示す研究も掲載された。新しい前立腺癌治療を受けた患者551例について分析した結果、治療の最初の3カ月間でPSA値が30%低下すると死亡率が50%低下することが判明した。長期的な患者の生存率の代わりにこの指標を用いることによって、治療効果をはるかに早く評価できるという。