冷凍卵巣組織移植後に出産
高用量の化学療法で癌(がん)から回復したものの、卵巣機能が損失された28歳のイスラエル人女性が、治療開始前に摘出し、凍結保存した自らの卵巣組織を移植し、体重6.6ポンド(約3,000グラム)の健康な女児を出産した。凍結保存した自己卵巣組織を移植して受胎能を復活させた初めての症例と見られ、化学療法による受胎能の損失に直面する何百万人もの若年女性に希望をもたらすことになる。
女性は非ホジキンリンパ腫(NHL)の従来的な化学療法を受けたが成功せず、高用量治療前に卵巣組織を取り出して凍結することを希望した。治療後、癌から回復したが閉経状態となった。2年間生理が認められず卵巣機能の損失が確認された。医師らは2年目に女性の希望により、解凍組織を左卵巣に移植、断片を右卵巣に注入した。処置から8カ月後、月経および卵細胞の成長が見られたため、さらに1カ月後、夫の精子との体外受精(IVF)を行って4分割胚を子宮に移植した。
論文著者でChiam Sheba医療センター(テルアビブ)体外受精センター長のJehoshua Dor博士によると、今回の治療の成功は組織の移植を皮下や腹壁などではなく、血液の供給が損なわれていない卵巣自体に行ったことに起因する。また、このような技術は年長女性の受胎能保存や重度の子宮内膜症への応用など多くの可能性があり、将来的には閉経を遅らせる療法ともなりうる。
以前の試みでは、1人の不妊女性が一卵性双生児の姉妹から卵巣組織を受けた後に出産した。また、ホジキン病治療後に卵巣機能を損失した別の女性も出産したが、組織の移植前に排卵が確認されたため、その卵細胞がもとの卵巣か移植組織のいずれに由来するかは不明であった。今回の処置の詳細は米国医学誌「New England Journal of Medicine」7月21日号に掲載予定である。