感情面でも“プラセボ効果”
偽薬が実際の疼痛を緩和したり、症状を改善させる、いわゆる「プラセボ(偽薬)効果」に専門家らは長年にわたって注目してきた。新しい研究では、このプラセボが感情面でも効果をもたらすことが明らかにされた。
医学誌「Neuron」6月16日号掲載の報告によれば、スウェーデンのカロリンスカ(Karolinska、ストックホルム)研究所の研究者らは、プラセボが疼痛の緩和と同じ基礎的な脳回路の反応によって不安感を軽減させることを発見した。
研究では、不快感を与える写真を被験者に見せ、その不快感を軽減されると伝えたうえで抗不安薬の実薬を投与した。次に、抗不安薬の解毒薬を服用させ、不快感が再びよみがえると伝えた。翌日、被験者には同じ抗不安薬を投与する旨を伝えたが、実際にはプラセボとして生理食塩水を投与した。同時に、被験者が不快感を催す写真を見ている間に、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて脳活性をスキャン(撮像)した。
その結果、プラセボ投与により、被験者の不快感度は29%軽減。一方、fMRIスキャンで、脳の感情中枢の活性が低下していることが示された。感情中枢の活性が最も大きく低下した被験者では、不快感の軽減度が最も大きかった。
研究者は「今回のデータは、これまでの疼痛に関する報告にみられる同じ方法で、感情面での体験がプラセボ治療によって調節(緩和)されることを示している」と述べている。