HIVの母子感染は陣痛時に起こる
死に至る可能性が高いHIV(ヒト免疫不全ウイルス)。小児のHIV感染の大半は母子感染によるものである。米ノースカロライナ大学チャペルヒル校公衆衛生学部疫学教授Steven Meshnick博士らの研究で、陣痛時に胎盤を通して少量の血液が胎児の体内に流れ込むことが、HIVの母子感染経路として説明されることが明らかにされた。医学誌「PLoS Medicine」11月21日号に掲載された。
Meshnick博士らはアフリカのマラウイ(Malawi)でHIVに感染した妊婦149例を対象に、臍帯(さいたい)血を採取し分析したところ、胎児が産道を通過する際ではなく、陣痛により子宮が収縮するときに、HIVの母子感染が起こることがわかった。
Meshnick博士によると、「これまで、HIVに感染した女性でも、陣痛を来す前に帝王切開術を施行すれば母子感染は起こらないが、陣痛を来してから緊急帝王切開術を施行すると感染することがわかっていた。今回の研究結果はこの事実に一致するものである。陣痛時に母子の血液が直接混ざることによって、感染を来すと考えられる」という。
この結果から、出産前に産道を消毒するなどの方法では効果が得られないことが示唆される。Meshnick博士は、HIVに感染している妊婦には、陣痛が起こる前に抗レトロウイルス薬を投与するのが好ましいとの見解を示している。