過敏性腸症候群に対する間違った認識
米国における過敏性腸症候群(IBS)患者の多くが、その原因や癌(がん)などの疾患に進展する可能性について誤った認識をもっていることが、2件の研究で明らかにされた。
米Dartmouth-Hitchcock医療センター(ニューハンプシャー州)のBrian E. Lacy博士は「IBSは最も発症頻度の高い疾患の1つであり、今回、多くの患者が何らかの問題に直面し、重大な心配事を抱えているにもかかわらず、十分な情報を得ていないことが明らかにされた」という。先ごろホノルルで開かれた米国消化器病学会(ACG)年次集会で発表された。
Lacy博士らは、IBS患者を対象に実施したアンケート調査を個別に2件の分析結果としてまとめ、計261例のデータを評価した。1件目の分析結果からは、IBSが食物アレルギーまたは食物不耐症に起因すると考えている患者がほぼ43%, 生活習慣の変化に起因すると考えている患者が82%に上ることがわかった。
また、IBSを発症すると解消されることはないと考えている患者が約3分の1, IBSが癌に進展すると考えている患者が16.7%であった。もう1件の分析では、IBSの原因として最も多い因子に関する回答を評価しており、不安が87.9%, 食事に関する因子が80.7%, うつ病が68.2%であった。
Lacy博士は「これはIBS患者の本疾患に関する理解を評価する初めての研究である。研究結果から、IBS患者に対する有効な教育プログラムを設定する必要性が明らかにされた」という。
このほか、米ボストン医療センターおよび米ノースカロライナ大学の研究者らがIBS患者200例を対象として実施した調査では、患者がIBSについて知識を得たいと考えている内容は、食事(60%)、薬物治療(58%)、対処法(56%)に次いで心理的因子(55%)であった。
医師に対する希望としては、80%が診察後に電話またはEメールによって連絡を取りたいと答えており、話を聞いてほしい(80%)、希望を抱かせてほしい(73%)、支援してほしい(63%)などの要望を抱いていることがわかった。