双極性障害の罹患率が予想以上に増大
米国成人における双極性障害(躁病とうつ病が交互に発現する疾患)の罹患率が軽度のものも含めて4.3%に達し、以前の推計罹患率1%をはるかに超えていることが新たな研究で明らかなった。米ハーバード大学医学部医療政策科教授のRonald C. Kessler氏が、先ごろ米ピッツバーグで開かれた第6回双極性障害国際会議で発表した。
今回の推計には、双極性障害の正確な臨床基準には満たないものの、日常生活に大きな支障を来す「亜領域(sub-threshold、I型、II型障害以外)」の症例も含めており、「双極性障害の全体的範囲を考慮すると、罹患率は認識されている割合を超える」という。
Kessler氏らが1万人近くを対象にインタビュー調査し、職場に対する影響を検討したところ、双極性障害患者の年間欠勤日数は平均49.5日であったのに対して、大うつ病患者は31.9日であった。双極性障害がうつ病よりも慢性化する傾向のあることが示唆された。
双極性障害の大きな問題は自殺率であり、患者5例中1例が自殺を図り死に至っているのに対して、一般集団では20人中1人である。ハーバード大学医学部精神医学教授のRoss J. Baldessarini博士の研究では、以前よく処方されていたリチウムを投与した患者は、同薬の投与を受けていない患者よりも自殺企図率が80〜85%低いことがわかっている。
米国政府はこの症候群に対する対策費として年間260億ドル(約2兆8,000億円)近くを充てている。Kessler氏はうつ病の検診について、双極性障害にまで対象を拡大する必要があるという。米国立精神衛生(メンタルヘルス)研究所(NIMH)によれば、双極性障害患者のほとんどは、薬物療法および心理療法など適切な治療を実施すれば、気分変動の管理に成功するという。