脳容量の減少が認知症を予測
健康な高齢者での脳容量の減少が、将来の認知症を予測する手段となるかもしれないという報告が、米医学誌「Archives of General Psychiatry」1月号に掲載された。
この研究は、オランダ、エラスムスメディカルセンター(ロッテルダム)のTom den Heijer博士らが行ったもので、当初、認知症の徴候を示していない60〜90歳の高齢者511人を平均6年間追跡調査したもの。脳の扁桃(へんとう)体と海馬(かいば)と呼ばれる部分に萎縮がみられた人は、認知症やアルツハイマー病を発症するリスクが最も高かったという。
脳萎縮を潜在的な予測因子とすることで、アルツハイマー病やその他の認知症が発症するのを予防したり遅らせたりする新しい治療法が開発できるかもしれないという。
研究は1995年に開始、1997〜2003年に追跡調査が行われ、被験者は記憶の問題について質問され、神経心理検査を受けた。35%が認知症を発症し、26%はアルツハイマー病と診断された。将来認知症となる運命にあった人では、5〜17%の脳容量減少があり、萎縮率はアルツハイマー病の人で、最大40%にまで上った。脳容量はMRIスキャンを用いて測定された。
Heijer博士らは、この研究によって、脳の構造的な画像診断から、記憶に問題が生じたり認知障害が測定できるようになったりする段階以前に、認知症となる高リスクの人を特定できることが示されたと述べている。しかし、「萎縮のみられた人の多くで、認知症が発症しなかったことも覚えておかねばならない」とも述べている。Heijer博士らは今後、他の予測因子も調べていくとのこと。