鳥インフルエンザウイルスにタミフル耐性株
世界に広がりをみせる鳥インフルエンザに有効性を示す数少ない抗ウイルス薬の一つタミフル(一般名:オセルタミビル)に耐性を示す複数の症例が報告された。
同薬に対する治療抵抗性を示す患者は、2005年10月にベトナムで1例が報告されているが、米医学誌「New England Journal of Medicine」12月22日号に掲載された報告によると、今回新たにベトナムで2人のH5N1型鳥インフルエンザウイルス感染症患者が治療抵抗性を示し、死亡したことが明らかになった。
英オックスフォード大学臨床研究部および熱帯病医療施設(ホーチミン市)のMenno D. de Jong博士らの報告によると、今回の治療失敗例はタミフルの推奨用量ではウイルスの増殖を抑止することができなかったものとみられており、ウイルスの増殖だけでなく、タミフルに対する耐性を獲得していた可能性がある。一方、生存患者6例はタミフルによる治療が奏効し、血中のウイルス量が検出不能なレベルにまで急速に低下したという。
de Jong博士は、耐性獲得は意外なことではないとした上で、「少なくとも一部の患者には、タミフルがウイルスの増殖を抑制するのに有効であることがわかったが、同薬に対する耐性が獲得されている可能性も明らかにされ、タミフルが無効となる恐れもある」ことを懸念し、高用量投与または他剤との併用療法について検討する必要性を指摘する。
一部の患者にタミフルが無効であった理由は明らかではないが、de Jong博士らは、ウイルスの増殖が急速に進み、タミフルを投与してもそれを抑止することができなかったか、薬剤が何らかの変化を来した可能性も考えられるとみている。
これに対して、米ミシガン大学公衆衛生学部疫学教授のArnold S. Monto博士は「耐性獲得によって死亡という転帰に至ったとは考えられない」とし、今回の死亡例はタミフルに対する耐性によるものではなく、ウイルスの毒性によるものであるとの見解を示している。