インフルエンザによる推計死亡数は ”膨らませ” すぎ?
米国政府はインフルエンザの脅威を誇大報告しており、2003年米国医師会誌「JAMA」に発表されたインフルエンザによる死亡数が3万6,000例に上るとする米国疾病管理予防センター(CDC)の推計値に、裏づけとなるデータは得られていない。米ハーバード大学大学院生のPeter Doshi氏の主張が、英国医師会誌「British Medical Journal(BMJ)」12月10日号に掲載された。
米国立保健統計センターによれば、インフルエンザに直接的に起因する死亡数は年間数百例のみであるという。推計値が高い主な理由は、高齢化が進んだことによって発症の可能性が高い65歳以上の年齢層の割合が増えることが挙げられているが、Doshi氏はこれを筋が通らないとし、「1990〜2000年の間の65歳以上の年齢層はわずか12%の増大をみただけである」という。1968〜1969年の香港型インフルエンザの流行でも死亡数が3万4,000例であったのに、3万6,000例の推計死亡数をどう説明するのか、との疑問を呈した。
これに対して、CDCの疫学者で2003年報告の著者であるWilliam W. Thompson氏は、米国の高齢化は長期にわたって大きく進んできており、1976〜1999年の間に高齢者は48%の増大をみたと説明。発症の可能性が最も高い85歳以上は、この間に2倍となったという。さらに、直接的な死因はインフルエンザではなく、肺炎と記載されることが多いと説明する。Thompson氏によれば、「インフルエンザに起因する肺炎が多いため、肺炎とインフルエンザは同じ項目に分類される」という。
また、ワクチン接種を勧めることによって、製薬会社の有益性を高めるための「広報活動」を行っているとの指摘に対しては、「CDCは製薬会社の承認など何ら必要としていない」と反論する。Thompson氏はCDCによる年次勧告はこれまでと同じ方法で実施するとした上で、「インフルエンザによる合併症の発症リスクが高い人はワクチン接種を受けるべきだ」と述べている。