テリ・シャイボさん死去、栄養チューブ撤去から13日
家族が分断し米国中を釘付けにした尊厳死論争の渦中の人であったテリ・シャイボさん(41歳、フロリダ州)が、栄養チューブの取り外しを命ずる判決から13日後に死亡した。CNNによれば、死亡時に立ち会ったのは夫であり法定後見人のマイケル・シャイボさんで、テリさんの両親シンドラー夫妻は同席しなかったという。APによれば、双方の意向によりテリさんの遺体はピネラス郡の検死施設に搬送され解剖される予定(編集部注=4月1日に実施)。
テリさんは15年前、摂食障害に起因すると考えられる化学的な平衡異常により心臓が停止し、不可逆性の重度脳損傷を来し、栄養チューブにより生命を維持していた。テリさんが人工的な手段による延命を望んでいなかったとし尊厳死を求めるマイケルさんと、延命を望むシンドラー夫妻との間で、数年間にわたる法廷論争が続いていた。
専門医らによれば、テリさんの状態は脳死と身体的生存との間のいわゆるグレーゾーンに位置していた。テリさんが微笑み瞬きする映像が公開されたが、ロチェスター大学医療センター内科精神医学医療人文学教授のTimothy Quill博士は「これが植物状態の姿である」という。アラバマ大学哲学および医学倫理学の教鞭をとるGregory Pence氏も、栄養チューブを取り外せば意識的に見えるものはすべて消失するとの見解に同意を示していた。
ただしPence氏は、テリさんの脳の基盤はまだ機能しており、「(専門家の間で)これを死と判断する見解の一致はみられていない」と述べている。このため、こうした患者にはイデオロギーと医学との中間、生と死との狭間の問題が生じることとなる。
Quill博士は、遺言書があれば尊厳死の決断にあたり有用であると指摘する。また、法的な「医療代理人」を指名しておくほか、近しい親類全員と個人的な話し合いを重ねておくことが、自らの希望を叶えるのに重要であるという。「自分にとって重要なことについて家族と話し合うこと。のちに家族はこうした決定を下す際にその内容に基づいて判断することができるためである」。