薄毛の原因
「薄毛の原因は遺伝」。かつてはそのように信じられてきました。しかし、最近は遺伝以外にもさまざまな原因があることがあきらかとなっています。どんな原因があるか、具体的に見てみることにしましょう。
男性ホルモン・レセプター
男性ホルモンには、髪や体毛の発育を促す働きがあります。しかし、前頭部や頭頂部では、反対に脱毛を起こすことがあります。いったいなぜなのでしょうか? 髪の根元部分は、「毛球部」と呼ばれています。このなかには、「毛母細胞」という組織があり、つねに細胞分裂を繰り返しています。増殖した細胞は頭皮の外へ押し出され、髪となるのです。毛母の成長に必要な栄養などを送っているのが、その下にある「毛乳頭」。毛根の周囲の毛細血管から栄養や酸素、男性ホルモンを取り込みます。ところが、前頭部や頭頂部にある毛乳頭の細胞内には、男性ホルモンを受け入れるレセプター(受容体)があり、このレセプターに男性ホルモンが取り込まれると、毛髪の成長が抑制されることが、最近わかってきました。レセプターの感受性は人によって異なりますが、強いと抑制作用が働いて薄毛が起こってしまうのです。
遺伝
前頭部や頭頂部の薄毛には、遺伝的要素がかかわっているとされています。とはいえ、親が薄毛だからといって、子どもが必ず薄毛になるわけではありません。父親の男性ホルモン・レセプターの感受性が強く、たまたま子どもがその傾向を受け継いだ場合に、薄毛が起こりやすくなるのです。
ストレス
精神的なストレスから、薄毛になることもめずらしくありません。ストレスにより緊張状態がつづくと、血行が阻害され、頭皮への血流が悪化してしまいます。栄養や酸素などが不足し、その結果、髪の成長が妨げられてしまうのです。
栄養不足
髪のおもな成分は、ケラチンと呼ばれるタンパク質。そして、ケラチンの合成には、ミネラルが必要とされます。したがって、健康な髪のためには、タンパク質の豊富な肉や魚、大豆製品、そしてミネラルを多く含む海藻などが不可欠といえます。これらが不足すると毛は細くなり、ついには抜けてしまいます。最近は過度なダイエットに走る人が増え、栄養不足による薄毛がよく見られるようになりました。
皮脂
頭皮からは、毎日大量の皮脂が分泌されます。頭皮を不潔にしていると皮脂が毛穴に詰まり、そこに細菌が入ってしまいます。毛穴が炎症を起こすと、脱毛が起こりやすくなるので注意しましょう。
自己免疫疾患
円形脱毛症の人には、まれに自己免疫疾患の患者さんが見られます。免疫とは、外から侵入する菌などと戦い、体を守る働きのこと。ところが、自己免疫疾患にかかると自分の体の細胞を外敵と勘違いし、攻撃するようになります。こうした場合に、たまたま毛根が敵と間違われると、薄毛が起こってしまうのです。
内分泌系の異常
ホルモンを分泌する内分泌系に異常が起こると、薄毛を発症しやすくなります。甲状腺の機能異常や糖尿病の場合も要注意。副腎(ふくじん)のホルモン異常「クッシング症候群」によって髪が抜ける場合もあります。
その他
老化も薄毛の原因となります。毛母細胞が衰えることによって、髪の発毛や成育が妨げられてしまうからです。また、お酒やタバコも髪にはよくありません。アルコールを分解するには、ビタミン、タンパク質などが必要となりますが、飲みすぎると慢性的な栄養不足を招き、髪の成長がストップ! 喫煙も血行を阻害するため、頭皮の血流を悪化させます。