心臓によい脂肪酸を多く含むブタが誕生
健康によいとされているオメガ-3脂肪酸を多く含む豚肉を提供する遺伝子組み換えブタが誕生したという報告が、科学誌「Nature Biotechnology」オンライン版3月26日号に掲載された。開発者の一人、米ハーバード大学(マサチューセッツ州)医学部助教授Jing X. Kang博士によると、「(このブタの肉を)食べれば、魚を食べるのと同じようにオメガ-3脂肪酸を摂取できる」という。
米テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンター助教授で米国栄養士会(ADA)広報担当のLona Sandon氏によると、オメガ-3脂肪酸は、体内でのコレステロール処理を助け、血管の詰まりを防ぎ炎症を抑えるほか、コレステロール値を下げる働きもあるという。一部の魚、亜麻仁油、大豆油、カノーラ油のほか、種子類、ナッツ類などさまざまな食品に含まれるが、健康効果を得るほどには摂取できていない人が多い。
そこで登場したのがこの遺伝子組み換えブタである。研究者らもまだ試食しておらず、これが近所のスーパーに並ぶには連邦政府機関の承認が必要だが、Kang氏は、来年(2007年)内にこの豚肉を一般の人も味わうことができるかもしれないと述べている。その場合、価格は普通の品種よりもやや割高になると考えられるが、生産コストに大きな差はなく、価格差も小さく抑えられるだろうとのこと。Kang氏らはすでに、オメガ-3脂肪酸産生ブタのクローンに成功している。
Sandon氏によれば、この豚肉が心疾患の発症率に影響するかどうかは現段階では不明だが、スペアリブやベーコン、ソーセージなどではなく赤身肉を選べば、豚肉はもともと健康的な食品であるという。「体によいかどうかは、結局は部位の選択と量によって決まる。賢く選び、食べ過ぎないこと」だと指摘している。
Kang氏らは当面、連邦政府助成によるこの遺伝子組み換えブタについての研究を続ける予定。また、ニワトリやウシに加え、脂肪酸含有量の少ない種類の魚についても、オメガ-3脂肪酸を増やすことを考えているという。