わさびやからしに反応するのは単独の受容体
ニンニク、からし、わさびの強烈な味から受ける快感と痛みは、単一の痛覚受容体によるものであることが、細胞生物学誌「Cell」3月24日号で報告された。この受容体は最近発見されたもので、「TRPA1」と呼ばれる。
この研究は、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のDavid Julius氏らが行なったもの。TRPA1欠損マウスから採取した神経細胞では、ニンニクおよびマスタードオイル(からし油)に対する感受性が全く認められなかった。また、TRPA1欠損マウスは、正常なマウスと異なり、マスタードオイルを足に塗布しても痛がる様子がなく、なめようとする動作もみられなかった。足の腫れも少なく、痛みの感じ方も鈍かった。
TRPA1欠損マウスのこのような特徴から、組織損傷や不快感、痛みを起こす神経細胞において、マスタードオイルやニンニクの作用が及ぶのは、TRPA1単独の部位であることが示されるという。
さらにこの研究で、催涙ガスに含まれるアクロレインや車の排気ガス、たばこの煙、一部の化学療法薬の副生成物など、数々の環境刺激物に対する反応でも、TRPA1が重要な役割を担うことがわかった。
Julius氏は「TRP受容体を刺激するものがわかれば、どう痛みが感知されるかについても新たにわかることがあるはずだ」と述べており、TRPA1についての新知見が、新しい消炎鎮痛薬の開発にも役立つと考えられるという。