肥満は考えられているほど危険ではない?
肥満はこれまで医師が心配してきたほど生命に危険を及ぼすわけではないかもしれない。過体重や肥満での死亡数や心血管リスクファクファーが減少しているという2つの研究が、米国医師会雑誌「JAMA」4月20日号に掲載された。
米国立健康統計センターのKatherine Flegal博士の研究は、BMI(肥満指数)別の死亡数について、1970年代前半〜1990年代前半の米国全国健康・栄養調査 (NHANES)の3調査と1999〜2002年のデータを検討。適正体重(BMI 18.5以上25未満)と比較して、肥満(BMI 30以上)では約11万例、過少体重(BMI 18以下)では3万4000例それぞれ死亡数が多かったのに対し、過体重(BMI 25-30)では死亡数に差がなかった。過去の調査では、肥満に起因する過剰死亡数は24万-41万4000例であった。
米国疾病管理センター(CDC)のEdward Gregg博士らの研究は、1960年〜2000年のNHANESの5調査データでBMI別に心血管リスクファクターを検討したもの。高コレステロール、高血圧、喫煙者数がすべてのBMI群で減少しており、肥満の場合、1960年初期には39%が高コレステロールであったのが1999〜2000年では18%に、高血圧は42%が24%に、喫煙率は32%が20%に低下していた。
コレステロールや血圧の低下は、意識の向上、スクリーニングの改善、より効果的な薬物治療により、また喫煙の減少は大規模な公衆衛生キャンペーンや喫煙に反対する政策によるものと考えられる。例外は糖尿病で、40年間一定していた。「JAMA」寄稿編集者David Mark博士は「リスクファクターの減少が、肥満による死亡の減少につながっている」と論説記事で述べている。
とは言うものの、今回の知見に対し「薬さえ飲んでいれば肥満はOKということではない」と研究者らは釘をさす。健康的な体重がベストなのは、専門家がそろって認めるところで、肥満は糖尿病に確実に関与し、ある種の癌との関連性も指摘されている。ニューヨーク大学医学センター外科的体重減少プログラムの外科医George Fielding博士は「過去のすべての研究で、肥満のみが理由で多くの人が死亡していることが明らかにされている。45歳の男性でBMIが45であれば、適正体重者より10年早く死亡する」と警告している。