分裂を重ねた幹細胞が癌化
成人幹細胞が体外で長期間にわたって増殖すると癌性を示すことが、科学誌「New Scientist」4月23日号に掲載された研究で判明した。幹細胞バンクに何年間も保存された幹細胞を用いる治療が安全とは言えないことを示唆する結果であり、多種の疾患治療に幹細胞が用いられるようになることへの期待に水を差すものであるといえる。
これまで、骨髄などから採取された成人幹細胞は癌を形成しないと考えられていた。今回の研究では、体外での成人幹細胞の分裂回数に制限を設ければ、安全であることが示されている。
スペインの研究では、脂肪組織から採取した間葉幹細胞を最大8カ月間増殖させ、90〜140回分裂させた。これを実験動物に移植したところ、最も時間が経っている幹細胞に癌が発生した。分裂回数のカットオフ値として60回を提案しているが、安全な限度を決定するにはさらに検討を重ねる必要があるとしている。
デンマークの研究では、間葉幹細胞のテロメラーゼ遺伝子のスイッチを永続的にオンにしておくと、最終的に幹細胞が癌化することが明らかにされている。