放射線医不足でマンモグラフィー受診が困難な状況に
検診施設での人員不足が続けば、米国女性がマンモグラフィー(乳房X線撮影)を受けるのは難しくなるかもしれないという調査報告が、放射線医学誌「Radiology」5月号に掲載された。
マンモグラフィーは、早期かつ治癒しやすい時期に乳癌(がん)を発見する最も効果的な手段だと専門家の多くが認めている。米国癌協会(ACS)は今年米国で21万1000人以上の女性で乳癌が見つかり、そのうち4万人が乳癌で死亡すると予測している。
米エモリー大学(アトランタ)教授で胸部画像センター所長のCarl D’Orsi博士らは、コロラド、ニューハンプシャー、ワシントンの3州45施設を対象に調査を行った。検診需要をまかなうだけの十分な放射線診断医がいない施設は45%に上った。申し込み1週間以内に予約がとれる施設は、症状や胸部の異常感をもつ人への診断マンモグラフィーの場合85%であったが、症状がなく早期癌発見のためのスクリーニングの場合は30%のみ、47%で2週間以上待ちであった。待ち期間が長いのは小規模施設よりも大規模施設で2、3倍多く、一部の施設では待ち期間が4週間に及んだ。この調査は2001〜2002年のものである。
かねてよりスクリーニングの遅れについては噂があったが、今回の調査でそれが立証され、予測よりも多くの施設に問題のあることが判明したという。待ち期間は現時点ではまだそれほどひどくないが、この傾向が続くと数年で危機的状況になると危惧される。マンモグラフィーがメディケア(65歳以上や身体障害者を対象とした米国の公的医療保険制度)できちんとカバーされず、他の保険会社もこれにならう傾向にある点や、放射線診断医の多くが、マンモグラフィーではなく、もっとやりがいがある他の分野へ移る点も、問題の一端を担っているという。
いずれにせよ受診希望者側の対策は明確で、十分日程の余裕を持って予約し、待たされても前の検診との期間が空き過ぎないようにすることだという。