飲む元気、お茶の働きを考えよう【前編】
お茶に含まれるさまざまな成分の効果・薬効が注目され、近頃ちまたは、ちょっとしたお茶ブーム。毎日何気なく飲んでいるお茶のこと、少し考えてみませんか?
●日本茶も中国茶も紅茶も原料は同じ葉っぱ
私達が日頃よく飲む日本茶、中国茶、紅茶は同じツバキ科の常緑樹「チャ」の葉が原料。それぞれ異なる製法を経ることで、まったく違った個性をもつお茶に生まれ変わります。その違いは、茶葉の発酵の度合いによります。日本茶は生葉に熱を加えて酵素の働きを止めた不発酵茶。紅茶は酵素を活発に働かせ、発酵を進めた発酵茶です。中国茶はさまざまなタイプのものがありますが、日本で人気の烏龍茶は、葉の酵素をゆっくりと働かせ、頃合いを見て発酵を止めた半発酵茶に分類されます。
●お茶のふるさとは中国茶として食べたのが始まり
お茶の発祥は中国。ベトナムやミャンマーとの国境に近い雲南省や四川省がルーツといわれています。
〈その昔、中国を収めていた「神農」という神様が湯を沸かしていると、傍らにあった茶の木から葉が湯の中に舞い落ちてきた。その湯を飲んでみると驚くほど美味しかった〉
中国には、お茶の起源にまつわるそんな神話も伝わっています。
もともと茶葉は、解毒作用のある薬として主に食用されていたものといわれています。引用されるようになったのが、いつ頃かは定かではありあませんが、少なくとも紀元前の中国では、現在のようにお茶として飲まれていたようです。その後、時代と共にお茶の産地も広がり、唐代(618〜907年)には中国全土で栽培されるように。喫茶の風習も上流階級から庶民へと広がり、近隣の国々へも伝わっていきました。
●緑茶は仏教と共に日本へ、青茶は英国に渡って紅茶に
中国茶のなかで最も古くからある「緑茶」が、日本に伝わったのもちょうどその頃。奈良時代の僧・行基が、留学先の中国から茶樹を持ち帰って植えたのが始まりで、後に最澄や空海も中国からお茶の種や、茶葉、茶器などを持ち帰り、お茶の魅力を宮廷貴族に伝えました。鎌倉時代には、お茶の栽培は日本各地に広がり、製法も日本独自のものへと発達していきます。有名な宇治茶もその頃に生まれました。室町時代になると武家の間で盛んに茶会が催されるようになり、やがて日本文化「茶の湯」へと発展していきます。
一方、ヨーロッパに広まるのは、ずっと遅れて17世紀。東インド会社が英国に、中国茶の中では「青茶」に分類される「武夷茶(ウーイーチャ)」を輸入したのがきっかけでした。同じ頃、ポルトガル宮廷から英国王室に嫁いだキャサリン王妃が、嫁入り道具として中国のお茶を持参したことで、英国の上流社会にお茶ブームが巻き起こります。こうして、当初、半発酵茶として英国に伝わった武夷茶は、英国人の好みに合わせて発酵度を高め、完全発酵の英国紅茶へと生まれ変わり、英国独自の紅茶文化を形作っていったのです。
● 鮮やかな緑の茶葉にビタミンがたっぷり
今週は、私たちになじみ深い「日本茶」にとことんズームイン
日本茶とは?
日本茶の大部分は緑茶です。中国の緑茶は釜炒りして発酵を止めますが、日本の緑茶は蒸すことによって発酵を止めるため、鮮やかな色が残り、うま味が濃いのが特徴です。玉露、抹茶、煎茶、ほうじ茶、茎茶など、製法や収穫時期によって様々な種類があります。
成分と効能
日本茶の主な成分は、タンニン、カフェイン、テアニンとビタミン類。苦味のもとであるカフェインは、煎茶や番茶に多く含まれ、大脳を刺激して集中力を高め、血流の流れをよくし、疲労回復を促す作用があるといわれています。渋みのもとになるタンニンには、近年、ガンや糖尿病予防に期待がかかる注目成分カテキン類が含まれています。このカテキン類は、特に煎茶に豊富です。日本茶特有のうま味のもとテアニンは、今話題のアミノ酸の一種。緑茶に多く含まれるγ‐アミノ酪酸は、脳の働きを活発にし、血圧を下げる作用があるといわれています。また、不発酵の緑茶は、中国茶や紅茶に比べてビタミンC・E・Aやミネラルがたっぷり。抹茶や玉露、煎茶など、茶葉の色が鮮やかなほどビタミンが多く含んでいます。飲みつづければ動脈硬化の予防や美肌効果にもつながるといわれる日本茶。その清々しい香りには高いリラックス効果もあることから、最近は「茶香炉」を使って、香りそのものを楽しむ人も増えているようです。
●わかりますか?日本茶の違い。
ひと口に日本茶といってもその種類はさまざま。見た目だけでなく味もずいぶん異なります。
抹茶
玉露と同じく覆下栽培した茶葉を石臼で挽いて粉末に。茶筅で泡立て、凝縮された甘味、苦み、うま味を堪能します。 玉露
茶樹に菰をかけて日光を遮り、新芽を刈る特殊栽培。とろりとした甘みと芳醇なうま味は最高級茶ならでは。 煎茶
日本茶の代表格。蒸した茶葉を細く揉んで仕上げてあり、甘みと渋みのバランスが良く飽きない味わい。 番茶
遅摘みの煎茶や煎茶の製造工程で出る茎や硬い葉を使います。さっぱりとした喉ごしが人気のふだん使いのお茶。
ほうじ茶
番茶や煎茶を強火で炒って、香ばしさを出したお茶。渋みや苦みがなく、胃にも優しいので食後にピッタリ。 茎茶
煎茶の茎を集めたもので、清々しい香りにキリっとした味わい。玉露の茎茶は「雁音(かりがね)」と呼ばれる高級品。 粉茶
煎茶や玉露の製造工程で出る、細かい茶葉を集めたお茶。後味のさっぱりとしたほどよい苦みは魚料理の後に最適です。
●美味しくお茶をいれるには?
玉露の入れ方
お茶に使う水はミネラル分の少ない軟水が適しています。水道水は軟水なので、沸騰させてカルキ臭さえ飛ばせば問題ありません。
1. 玉露には100ml程度の小さな急須を使います。沸騰した湯をまず茶碗に注ぎ、次に空の急須に移します。
2. 急須の湯をさらに湯冷ましに注ぎ移し、50℃〜60℃まで冷まします。
3. 茶葉10gを入れた急須に、湯冷ましの湯を注ぎいれ、2分〜2分30秒蒸らします。茶葉の量は茶碗3杯分で10gが目安です。
4. 茶碗にお茶を注ぎ入れます。注ぎ残さないよう、最後は軽く振って注ぎきりましょう。