オメガ-3脂肪酸の心疾患予防効果はまだ立証されていない
脂分の多い青魚に含まれるオメガ-3脂肪酸が心臓病予防に役立つとされ、積極的な摂取が勧められているが、その効果はまだ立証されていないことが英国の研究で示された。米国の専門家も研究結果には異議を唱えていないが、一方で、心臓病のない人には魚食は何ら害がなく、また心臓発作(心筋梗塞)などの既往者も、オメガ-3脂肪酸摂取がよいとコメントしている。
英国医師会誌「British Medical Journal(BMJ)」3月25日号掲載の研究では、魚やサプリメント(栄養補助食品)からのオメガ-3脂肪酸摂取による、心疾患、脳卒中、癌(がん)での総死亡への影響を検討した89の研究を分析。
研究著者で英East Anglia大学(Norwich)栄養学のLee Hooper氏は、過去の研究結果は「混在」しており、2件の大規模研究がオメガ3による便益を示していたが、最近の大規模研究では認められていないという。評価上の問題点の一つは、大部分の臨床試験で、対象に心疾患既往患者を含んでおり、すべての研究をまとめて評価するとあいまいなものとなる。このためHooper氏は「オメガ-3脂肪酸の真の予防効果を判断するには、より多くの大規模な研究が必要であり、現時点では明確に便益性を断言できないため、慎重になるべきである」と述べている。
米国立心肺血液研究所(NHLBI)の専門委員会も2004年に同様な見解を示している。メンバーの一人で米ジョンズ・ホプキンス大学(ボルチモア)ブルームバーグ公衆衛生学部準教授のEliseo Guallar博士は「心臓病の一次予防の面でもこの問題の答は得られておらず、一般大衆に推奨するためには追加研究が必要だ。ただしこれから研究を始めたとしても、結果が得られるのは5年から7年先になる」と述べている。
その一方で、同博士は「心疾患既往者に対するオメガ-3脂肪酸の価値に疑う余地はなく、ある研究では、心臓発作患者に魚油を1日850mg摂取させることで、心臓突然死のリスクが十分に低減した」と述べるとともに、魚食の週2回以上の摂取を推奨する米国心臓協会(AHA)の方針を支持している。