食品を大腸菌から守る「食べられる」ラップ材
病原性大腸菌O-157:H7をはじめとする有害な微生物から生鮮食品を守るための、食べられるラップ材が米国農務省(UDDA)により開発中だという。今年(2006年)9月、米国ではホウレンソウによるO-157感染で200人近くが発症し3人が死亡したほか、サルモネラ菌感染、大腸菌に汚染されたレタスや牛肉のリコールも報告されていることから、このラップ材が注目されている。
USDA農業研究サービス局(ARS、カリフォルニア州)の食品化学者Tara McHugh氏らのグループは、リンゴのピューレから作った薄い膜状のラップ材にオレガノ油、レモングラス油、シナモン油のうちそれぞれ1つを添加したものを作製、大腸菌抑制効果を調べた。この結果、オレガノ油を添加したものに最も高い効果がみられ、3分以内に大腸菌O-157:H7を50%以上死滅させたという。この成果は、食品農業化学専門誌「Journal of Food and Agricultural Chemistry」11月29日号に掲載された。
しかし、このラップ材の実際の使用については疑問を呈する声もある。生鮮食品を輸送する際の温度変化などのさまざまな条件を考慮して、さらに厳密な研究が必要であるとする指摘のほか、オレガノ油へのアレルギーを懸念する声もある。また、微生物は生鮮食品の表面や内部のいたるところに潜んでいることから、効果の完全性や持続性についても疑問が挙がっている。
USDAがこの研究に関心を持っている理由は、生産者に野菜や果物の価値を還元し、かつ消費者にもっと野菜や果物を食べて欲しいためだとMcHugh氏は述べている。McHugh氏は現在、さまざまな病原菌に対するさまざまな天然物質の効果を調べており、結果いかんによっては、1〜2年以内に商品化ができると見込んでいる。抗微生物効果のない食べられるラップ材は、腐敗防止用にすでに商品化されており、USDAのパートナーであるOrigami Foods社(カリフォルニア州)はリンゴのピューレから作ったラップ材をハムに、ニンジンやトマトから作ったラップ材を寿司に用いているという。