長年禁煙しても脳卒中リスクは高いまま
禁煙するのはよいことだが、脳卒中リスクは、喫煙していた期間でなく何本吸っていたかによるという報告が、フロリダ州Kissimmeeで開催された米国脳卒中協会(ASA)主催の年次脳卒中会議で発表された。この知見は、禁煙から5〜15年経過すると、元喫煙者の長期的な心疾患リスクが未喫煙者と同等にまで下がるという従来の考えに相反する。
米ジョンズ・ホプキンス大学病院(ボルチモア)のSachin Agarwal博士らは、平均年齢73歳の男女42人について、大動脈(心臓から出る太い動脈)の壁の厚さを精密なMRIにより比較した。被験者のうち27人は元喫煙者で、残り15人は一度も喫煙したことがない。元喫煙者は平均して30年前から禁煙しており、禁煙前は平均20箱・年の煙草を吸っていた。「箱・年」は喫煙年数と1日に喫煙していた箱数を示す。
その結果、元喫煙者では禁煙してから何年も経過しているにも関わらず、未喫煙者よりも動脈壁が有意に厚く、過去の喫煙量が多いほど厚いことがわかった。Agarwal博士は、過去の研究では元喫煙者の喫煙量を考慮しておらず、「禁煙してからの年数よりも、吸っていたたばこの数が2倍重要だ」と述べている。
しかしこの研究は、信頼するには規模が小さすぎるという声もある。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)神経科学助教授のThomas M. Hemmen博士は、「(脳卒中)リスクが止まることは大規模研究で疫学的に示されている」と反論している。
Agarwal博士は、今回の結果は喫煙についての標準的な考えをなんら変えるものではなく、「まずたばこを止めること。それがベスト」と述べ、喫煙年数よりも喫煙量がよりダメージを与えることから、現在の喫煙者はせめて吸う本数を少なくするよう努力すべきであると助言している。