健康と音楽〜こころによく効く“音楽の薬”〜
「心の風邪」を優しく癒す音楽の不思議な力
「最近、好きな音楽を聴いていますか?」ストレス症で心が疲れて来院する方に、時々尋ねてみます。「そんな気持ちになれないんです」「ゆっくりできる時間なんてありません。昔は好きだったのですが…」心の余裕がなくなり、追いつめられた気持ちなのですね。あなたはどうですか。以前こんなことがありました。思春期の女の子です。ストレス状態が続いて感情をうまく表せなくなる、いわゆる失感情症の症状です。心が閉じて無表情になり、悩みを話すこともできません。そこでゆったりと音楽を流して、「あなたの心の中にあるのは、どんな気持ちかな? この歌の中にあるかな?」と歌詞カードを渡してみました。しばらくじっと見ていたその子は一つの歌詞をさし「これが私の気持ち」と静かに泣き始めたのです。医者がどん言葉を費やすよりも、歌が心の緊張を和らげてくれるの子は一つの歌詞をさし「これが私の気持ち」と静かに泣き始めたのです。医者がどんなに言葉を費やすよりも、歌が心の緊張を和らげてくれるのですね。
音楽が心に与える効果は大きく、さまざまなストレス症を治癒する力があることも明らかになっています。音楽は根元的に人間の生理に深く根ざしたもの。だからこそ美しい音色に触れたとき、身も心も浄化されるような気持ちになるのではないでしょうか。
私は音楽が大好きで演歌派ですが、一昨年に小澤征爾さんのニューイヤーコンサートを聴いて感動しましたね。音楽がどれほど心を揺り動かすのか、自分でも驚いたほどです。音楽は気軽にできるストレス解消法です。そのときの気分で曲を変えることができます。例えば悲しいときは優しいメロディー。イライラしていたらテンポの速い曲。腹が立っていたら豪快な音楽。通勤の電車の中や家事をしながらの“ながら音楽”でいいのです。毎日の生活の中に音楽を取り入れて気分をリフレッシュしてください。
ココロも、カラダもリフレッシュ!楽しい「カラオケ」の健康法
音楽をもっと身近に楽しむ健康法として、ぜひお勧めしたいのが「カラオケ」です。うまいヘタは二の次。お腹の底から大きな声を出して歌えば、憂鬱な気分はどこかへ吹き飛んでしまうでしょう。歌うときの呼吸の仕方は、実は健康にもとても良いのです。試しに演歌を歌ってみましょう。♪わたし昔から〜そう〜でした〜♪息を深く吸い込んで、長く少しつ吐き出さなくてはいけませんね。これが緊張緩和に大きな効果があるのです。不安状態にあるとき、呼吸は浅く、短くなっています。逆に落ち着いているときは、深く、長くなります。普段の呼吸数はおよそ1分間に15〜20回程度。カラオケを歌っているときは5〜10回くらいに減少します。よく緊張したときに深呼吸(腹式呼吸)をして心を落ち着かせたりしますが、歌うことは深呼吸をするのと同じリフレッシ効果が得られるわけです。肺の換気効果も高まりますね。
歌の「喜怒哀楽」にあわせて思いきりスター気分に!
カラオケの素敵な魅力はもう一つあります。歌詞やメロディーにあわせて歌のさまざまな情感の世界に浸り、スター歌手になりきって思いきり自分の感情を表現できることです。
ストレスを解消する上でこのような自己表現はきわめて大切で、心身症には「表現療法」という治療法があるほど効果的なのです。カラオケを歌うことで自然に心の鬱憤を発散させ、無意識のうちに表現療法を行っていることになるわけですね。カラオケが嫌いな方もいらっしゃるでしょうが、ぜひ良いところにも目を向けて楽しんでみてください。
心の健康には身体からのアプローチも大切です。音楽を身体で楽しみ、同時に心から楽しんで、どうぞ健やかな毎日をお過ごしください。
マイク一本でスッキリ!歌ってイライラを発散しよう
人前で自己表現できることがカラオケの良いところ。オーケストラをバックにステージに立ったつもりで、思いきり自己陶酔しましょう。歌にあわせて喜怒哀楽を表現することは、最高の気分転換ですよ。お互いの歌に拍手喝采しあえば心もつながり、仲間とのコミュニケーションも深まりますね。