牛乳が造影剤の替わりに
炎症性腸疾患の一つであるクローン病などの腸管造影検査の際に、牛乳がバリウム含有の造影剤の替わりになることが、先ごろシカゴで開催された北米放射線学会(RSNA)で報告された。
米St. Luke’s-Roosevelt病院(ニューヨーク)放射線科のLisa Shah-Patel博士らは、腹部・骨盤部のCT検査を受ける患者を対象に、バリウム含有の造影剤VoLumenと代替品として牛乳を比較。62人がVoLumenを、106人が2用量(1回目400〜600ml、2回目200〜400mlで合計量は1リットルまで)の全乳を摂取して撮像を行った。
その結果、VoLumenは特定の像を見る上でより良い画像を提供したが、42%の患者が腹部への副作用を報告、牛乳群で異常を訴えたのは25%のみだった。VoLumenは下痢を引き起こす可能性があるという。費用は、VoLumenは一人当たり18ドル(約2,000円)であるのに対し、牛乳は1.39ドル(約160円)と廉価であった。Shah-Patel博士は「造影剤を牛乳に替えることで、特に子供など造影剤を嫌がり検査を拒否する人の数を減らせることが期待できる」と述べている。
米ハーバード大学医学部放射線科のRaul N. Uppot博士は、牛乳が造影剤の代用になることには懐疑的だ。同氏は「耐容性の改善のために画像の質を犠牲にすべきではないと考える。患者の中にはアレルギーや腸疾患で牛乳摂取が不可能な人もいる。より多数の患者での試験が必要であり、おそらく牛乳に対する不快感や下痢を来たす人が多くみられることになるだろう」と述べている。