予防的な乳房切除が安心感をもたらす
乳癌(がん)診断後に罹患乳房とともに非罹患乳房も切除する「予防的乳房切除術」を受けた患者はその判断を後悔しておらず、生活の質(QOL)にも満足していることが、米医学誌「Journal of Clinical Oncology」3月20日号に掲載された研究で明らかになった。
癌研究ネットワーク所属の6施設において実施された研究では、580人の乳癌患者を対象に、QOL、身体へのイメージ、性的満足感、再発の不安、抑うつ感、健康への意識などの調査が行われた。6医療施設のいずれかで治療を受けた被験者は、1979〜99年に乳癌と診断されており、うち519人が予防的乳房切除術を受け、61人が罹患乳房のみ切除していた。
調査結果によると、予防的乳癌切除術を受けた519人の86.5%が自分の決断に満足だと回答。また、QOLの「満足度が高い」と回答したのは76.3%で、非罹患乳房を温存した61人の75.4%と同等であった。癌再発に対する不安感があるのは、予防的乳房切除術を受けた患者では約半数、温存した患者では75%だった。
米ニューヨーク大学癌研究所乳癌スクリーニング・予防医療プログラム責任者のJulia Smith博士は、調査結果に対して「驚く内容ではなく、われわれの臨床経験と完全に一致している」と述べている。同博士はまた、予防的手術を受けるか否かの判断の難しさに言及し、危険性と便益性(ベネフィット)を正確に評価するプログラムを採用している施設で治療の判断をあおぐべきだという。
研究著者で米ウェイクフォレスト大学バプティストメディカルセンター(ノースカロライナ州)公衆衛生学準教授のAnn Geiger氏は、予防的乳房切除術は癌再発リスクを95%まで減少させるが、全ての乳房組織を取り除くことは不可能であり、再発の危険性は常に存在すると述べている。