カプサイシンが前立腺癌(がん)細胞を死滅させる
唐辛子の辛味成分であるカプサイシンに、前立腺癌(がん)細胞を死滅させる可能性を示す研究報告が、米医学誌「Cancer Research」3月15日号に掲載された。
米シーダースサイナイ・メディカルセンター(カリフォルニア州)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の合同研究グループによると、マウスに癌細胞を用いた初期実験で、カプサイシンが前立腺癌細胞に一種の自殺行為をさせることが明らかになった。報告では、マウスの前立腺癌細胞の約80%が死滅し、前立腺癌腫瘍のサイズは未治療マウスの5分の1であった。
カプサイシンの効果で最も顕著なのは、癌細胞の増殖を促す分子メカニズムであるNF-kB(NF-カッパ ベータ)の阻害作用だが、同メディカルセンター血液学・腫瘍学部長でUCLA内科学教授のH. Phillip Koeffler博士は「マウスに投与したカプサイシンはヒトが1週間に3回、ハバネラペッパー(世界一辛い唐辛子)を10本摂取する計算になる」と指摘、チリソースに飛びつくのは時期尚早と述べている。
米国癌協会(ACS)のLen Lichtenfeld博士は「大量のカプサイシンをヒトに投与したことがなく、副作用が不明だ。現段階では臨床試験の実施には程遠く、基礎的研究を重ねる必要がある」と述べている。また、エール大学医学部公衆衛生学教授のDavid L.Kats博士は「今回の報告は、前立腺癌治療に対するカプサイシンの有効性を証明してはいないが、これらの疑問に答えるためにもヒト前立腺癌に対するカプサイシンの臨床研究を促す説得力のある論拠を提供している」と述べている。
研究者は、カプサイシンもいずれは前立腺癌の補助的治療としての地位を獲得すると信じている。Koeffler博士は「前立腺手術後にPSA(前立腺癌特異抗原)値が上昇し始めた患者に使用することが考えられる。またカプサイシンは白血病にも効果があり、さらに他の癌細胞の増殖を遅延あるいは阻害する効果も見込める」と述べている。