有名ブランドは脳に刻まれる
マーケター(製品づくりの一切を取り仕切る人)は、神経学的な見方をすると、消費者をとえる手段を心得ているかもしれない。若者を対象にリアルタイム機能MRI(fMRI)を用いた研究で、馴染みのあるブランドは、知名度の低いブランドに比較して、脳がより素早く、かつより前向きにとらえることが明らかになり、先ごろシカゴで開催された北米放射線学会(RSNA)で発表された。
ドイツ、Ludwig-Maximilians大学(ミュンヘン)放射線学科のChristine Born博士らの研究チームは、健康で教育レベルの高い男女20人を対象にfMRI検査を実施。知名度が高いか、あまり知られていない自動車メーカーと保険会社のブランドロゴを見せた結果、2種類のロゴ間で、被験者の脳の活動が著しく異なることが明らかになった。
知名度の高い自動車メーカーや保険会社のロゴは、脳皮質や肯定的な感情プロセスに影響を及ほす部位、自己認識に関与する部位を活性化させた。Born博士は「強力なブランドでは、脳のこれらの部位での処理が短時間でできたが、それとは対照的に、弱いブランドでは記憶作動にギアが入り、作動により多くの時間を費やした。これは処理や容認により努力が必要だったことを意味する」と述べている。
米南フロリダ大学医学部Excellence for Aging and Brain Repairセンター所長のPaul Sanberg氏は「研究結果は興味深いが、消費者の好みや行動について確定的なことを明らかにしているわけではない。ただし脳機能が活性化しているのは事実であり、それには別の行動的な相互関係が考えられる」と述べている。
今回の研究結果は、心理学者、神経学者、放射線学者、マーケティング専門家らが、消費者マインドの謎を解くために共同作業している「神経経済学(neuroeconomics)」という新しい分野での話題を提供している。Born氏は「研究の構想は、人々のニーズをよりよく理解し、それを満足させる市場を構築し、新商品や新サービスに着手する際の間違いを避けることにある」とし、「ニーズをより真剣に受け止めることで、より高い消費者ニーズや生活の質に貢献できる」と述べている。