世界的にみられる血圧下降の傾向
米国ほか4大陸21カ国の38地域を対象とした人口ベースの研究から、世界的に血圧下降の傾向がみられることがわかった。1980年代半ばから1990年代半ばにわたり収集したデータによると、血圧は平均2.26mmHg下降しており、男性よりも女性に著明だった。この研究は英Dundee大学Ninewell病院心臓疫学教授のHugh Tunstall-Pedoe博士らによるもので、英国医師会誌「British Medical Journal(BMJ)」オンライン版3月9日号に掲載された。
今回の結果は、降圧薬などの薬物治療によるものとは考えにくいという。治療の必要な高血圧症患者だけではなく、全体にわたって血圧下降が認められることから、医師の力よりもむしろ大衆的なものが要因であると考えられるが、Tunstall-Pedoe氏は「どのような説明も、今一つ決め手に欠ける」と述べている。
米エール大学(コネチカット州)医学部予防研究センター長で公衆衛生学准教授のDavid L. Katz博士は、これを食生活と医療の向上によるものと考える。食事や運動への関心の高まりが功を奏したと思われるが、一方で「もしそうであれば、肥満やインスリン抵抗性にも低下がみられるはずだが、これらは逆の方向に進む傾向がみられる」と指摘している。
Katz博士によると、他の要因として葉酸、カルシウムなど栄養強化食品の消費増加も考えられるという。さらに、果物や野菜が一年中手に入るようになったことや、各地域で喫煙への規制が増加していることも一因と思われる。また、高血圧症患者の血圧下降については、医療の向上に負う部分があるのも確かだという。
多くの国で血圧下降の傾向がみられ、心臓発作(心筋梗塞)や脳卒中のリスクも軽減されると考えられるが、「このうれしいニュースをどう説明すればよいのか、実はまだよくわからない」とKatz氏は述べている。