カルシウムサプリメントが妊娠合併症を低減
食事性カルシウム摂取量の低い妊婦がカルシウムサプリメント(栄養補助食品)を摂取することにより、妊娠合併症の一つである子癇(しかん)前症(浮腫などを伴う高血圧)を予防する可能性のあることが明らかになった。しかし、研究を行った世界保健機関(WHO)の研究グループは、サプリメント摂取で子癇前症の患者数が有意に減少することはないとしている。
米医学誌「American Journal of Obstetrics & Gynecology」3月号に報告され研究では、WHO母体周産研究ネットワークに所属する6カ国8施設の妊婦8,300人が、カルシウムサプリメント1.5g/日摂取群とプラセボ(偽薬)群に割り付けられた。研究開始時には、全ての妊婦の食事性カルシウム摂取量は、600mg/日(推奨摂取量の半分)未満だった。
追跡調査の結果、子癇前症の罹患率では両群間に統計的な有意差は認められなかったが、子癇の発生は摂取群で低く14例、プラセボ群では25例であった。重症の妊娠高血圧症も、摂取群では43例、プラセボ群で59例であった。また新生児死亡および早期産(32週未満)リスクも同様な傾向が認められた。
研究著者で米シカゴ大学(イリノイ州)医学・産科婦人科学名誉教授のMarshall Lindheimer博士は「カルシウムによる効果の機序は明らかでないが、血管が拡張し、それにより重症度が軽減されるのではないか」と述べている。
米ニューヨーク大学医学部産科婦人科準教授のAshley Roman博士は「今回の研究結果は、子癇前症のプロセスの理解を深めてくれた」と述べる。同博士は妊婦にカルシウムを1,200mg/日、食事で無理ならばサプリメントで摂取するよう助言している。
共著者でWHOのJose Villar博士によると、子癇前症は世界中の妊娠の9%に影響を与え、未熟児出産や帝王切開につながる危険性がある。進行すると痙攣(けいれん)発作や昏睡を伴う子癇になる。子癇前症は最悪の場合、母体や胎児の障害や死亡の原因ともなる。