一度に大量の飲酒が最も大きな脅威
アルコールを過剰摂取する米国人の多くは、完全なアルコール依存症ではなく、「大量飲酒者」であることが、米ニューメキシコ州の調査で明らかにされた。短時間に一気に度を過ごした飲み方をするこれら大量飲酒者は、アルコール関連の障害をより来しやすいという。
「Alcoholism: Clinical & Experimental Research」2月号掲載の調査研究では、同州住民の16.5%が過剰飲酒者で、正式なアルコール依存症に当てはまった男女は1.8%に過ぎなかった。研究著者のニューメキシコ州保健局アルコール疫学者のJim Roeber氏によると、米疾病対策予防センター(CDC)の調査で、2001年にはアルコール過剰摂取が原因で7万5,000人が死亡していることが報告されており、「重度のアルコール乱用による悲惨な状況が示されている」という。
同氏らは「アルコールの過剰摂取は、肝硬変、膵炎、さまざまな癌(がん)、高血圧、さらにはうつ病や自殺リスクを上昇させるなど、多くの深刻な健康被害をもたらし、さらにアルコール乱用は、酔った状態での運転や機械の操作などでの危険行為にもつながる」と述べている。
Roeber氏らが分析した2002年に行った電話調査では、18歳以上の州住民4,800人を対象に、調査直前月の過剰飲酒回数や飲酒運転回数を尋ね、アルコール依存度の審査を行った。その結果、55%が現行の飲酒者で、過去1年間でアルコール関係の問題を3件以上起こした依存者は2%以下だった。16.5%が過剰飲酒者であり、その88%は一度に5杯以上摂取する「大量飲酒者」であることが明らかになった。また、過去1カ月間に飲酒運転を行ったのは、全体では2%だったが、大量飲酒者では約12%、依存症者では17%だった。
Roeber氏は「今回の調査結果が、国の公衆衛生政策に変換をもたらすことを望む。現在の政策では、約40億ドル(約4,800億円)が依存症治療に向けられているが、アルコール乱用予防にはわずか10億ドル(約1,200億円)しか充てられていない。一度に大量飲酒するのを抑制する方法はいろいろあるが、依存症治療とは大きく異なる」と述べている。
CDCアルコールチームの一員で、ニューメキシコ州公衆衛生医師のTimothy Naimi博士は「高血圧などを事前に治療して心臓発作を予防するのと同じアプローチがアルコールでもできなければ、遅きに失することになる」と指摘、今回の研究は飲酒する人と医師の双方に重要な警鐘を鳴らしているとしている。