1秒間に3万2,000個の神経細胞が死滅
脳卒中(虚血性)の初発症状が認められたら即時に対応する重要性を強く訴える統計学的データが、米カルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)神経学教授のJeffrey L. Saver博士によって示され、医学誌「Stroke」12月9日号に掲載された。脳卒中の発症によって動脈の血流が遮断されると、その直後から損傷を来すことになる。以下に、その損傷について具体的に示す。
・1秒間に3万2,000個、1分間では190万個のニューロン(脳神経細胞)が死滅する。
・ニューロン間の接合部位であるシナプスが、1分間に140億個死滅する。
・有髄神経線維が同じく1分間に7.5マイル(約12km)喪失する。
Saver博士は10年にわたって、脳の画像診断、脳卒中治療の成果、神経の立体解析学的方法(3次元細胞数計測法)という3通りの方法で研究を進めてきた。その結果、損傷を数値で示すことができ、迅速に治療を実施すれば、脳細胞の喪失をある程度抑制することができることがわかったという。
逆に治療をしなければ、12分間毎にエンドウ豆大の脳の範囲が死に至ると推計される。脳内のわずかな細胞領域の血液供給が遮断されると、その直後にその領域は死に至るが、周辺細胞はある程度の血流を維持するため、「治療介入のわずかなチャンス」があるという。
米ノースウェスタン大学神経学教授で米国心臓協会(AHA)代表者のMark J. Alberts博士は、今回の結果に対して、脳卒中の諸症状に注意を促すよう呼びかけるきっかけになったとの見解を示す。脳卒中の諸症状として、身体の片側に突然脱力や麻痺が生じる、突然の視覚障害、話すことができなくなる、相手の話の内容が理解できない、歩行障害、平衡感覚の喪失、重度の頭痛などの症状が挙げられる。
Alberts博士によれば、患者本人が対応できない状態であること多いため、症状に気付いた人が何らかの措置を取る義務があると警告している。