メラトニンで眠れるとは限らない
メラトニンは処方箋のいらないホルモンサプリメントとして広く使用されているが、不眠症の原因によっては睡眠薬のような効果は期待できないという。また、時差ぼけの予防や緩和にも役に立たないという研究報告が、2月10日発行の英医師会誌「British Medical Journal」に掲載された。
カナダ、アルバータ大学のNina Buscemi氏によれば、この研究は内科的疾患や精神疾患を伴う特定の睡眠障害に注目したもので、メラトニンが睡眠補助に全く役立たないというわけではないという。分析した研究での被験者数のサンプルサイズは比較的小規模なものであり、「さらに大規模な研究が実施されれば違う結果が出るかもしれない」とBuscemi氏は述べている。また、自身は医師ではないため治療について提言する立場にはないとしている。
不眠を訴える高齢者には迷わずメラトニンを勧めるという医師もいる。米マサチューセッツ工科大学(MIT)の神経薬理学教授Richard J. Wurtman博士によれば、メラトニンを産生する脳の松果腺は「年齢とともに働きが悪くなる」ため、高齢者には不眠に悩む人が多い。Wurtman博士らは2001年に、低用量(0.3mg以下)のメラトニンが高齢者の不眠症に効くという研究結果を発表している。しかし、過量に摂取すれば、逆にホルモンを細胞内に取り込む受容体の働きを停止させてしまうという。
今回の研究対象では6mgという高い用量が用いられており、現在市場に出回るメラトニンも同じように高用量のものがほとんどである。このため「しばらくすると不眠症が悪化することになる。血液中のメラトニン濃度を若いころと同程度まで上げるには低用量で十分」とWurtman博士は述べている。
MITが低用量メラトニンの使用に関する特許を保持しているため、Wurtman博士にとってこれは個人的な利害も絡む問題である。「われわれの製品の方が優れていることを示す論文はいくらでもある」という。