薬剤溶出ステント、FDAは継続の姿勢
薬剤溶出性のステント(血管を開いた状態に保つ円筒形の金属メッシュ)が、凝血や心臓発作による死亡リスクを増大させることが複数の研究で示されたことを受けて、米国食品医薬品局(FDA)諮問委員会によって2日間にわたる討議が行われた。その結果、同委員会は、しかるべき警告を表示した上で、薬剤溶出ステントの市販を継続するべきであるとの見解を発表した。
薬剤溶出ステントは、薬剤を溶出することにより血管形成術後の再狭窄を防止する。従来の金属ステントでは頻繁に再狭窄が生じ、再施術を要することが多かったが、数年前より薬剤溶出ステントが主流となり、これまでに世界で約600万人が同ステントを留置していると推定されている。しかし、最近の研究では長期的なリスクが示唆されており、同ステントが米国で毎年2,160人の死亡数増加をもたらしているという報告もある。
諮問委員会は今回、薬剤溶出ステントと各リスクとの間に相関はみられるものの、因果関係については証拠不十分とした。ただし同ステントを留置した患者は、少なくとも1年間は抗血液凝固薬を使用する必要があると示唆。専門家からは、認可外使用の多い点が問題という指摘もある。薬剤溶出ステントの使用は2個までが認可されており、3個以上は認可外使用となるが、この処置を受ける患者の60%は認可外使用だという。諮問委員会は、認可外の使用について医師への警告を説明書に表示することを勧告しているとAP通信は報じている。
これに対し、FDAの対応は根拠の不確かさを反映するものであり、同ステントによる処置を受ける患者数を考えれば憂慮すべきことであると指摘する専門家もいる。別の専門家は、抗血液凝固薬使用に関する勧告は不十分と指摘しているほか、従来の冠動脈バイパス術を採用するべき症例にステントが使用されることへの懸念を挙げている。しかし同時に、薬剤溶出ステントのおかげで再狭窄の問題が完全に解消され、臨床の場に劇的な変化がもたらされたことも事実であり、全体として、問題の発生率はきわめて少ないとも述べている。