抜け毛防止薬が前立腺癌(がん)検査値に影響
抜け毛防止用の内服薬プロペシア(商品名)によって、前立腺癌(がん)のスクリーニングに用いられる前立腺特異抗原(PSA)検査の結果が変化し、疾患の有無が不明確になるという知見が報告された。米ブリガム?アンド?ウィメンズ病院(BWH、ボストン)のAnthony D Amico博士らによるこの報告は、英医学誌「Lancet Oncology」オンライン版12月5日号に掲載されたもので、同博士は、プロペシアを使用している男性は、このことを知っておくべきだと述べている。
男性は主に40〜50代から定期的にPSA検査を受け始める。PSA値は通常は低いが、前立腺癌または良性の症状によって上昇する。プロペシアの有効成分はフィナステリドという薬剤で、元来は前立腺肥大症の治療のために開発されたもの。その後、抜け毛治療に使用されるようになり、米国では現在、約100万人が抜け毛を食い止めるためにこの薬剤を使用している。
2003年に発表された大規模研究では、前立腺肥大症治療を目的とするフィナステリド製剤Proscar(日本国内未承認)に、前立腺癌の減少との関連がみられることがわかった。D Amico博士によると、ProscarによってPSA値が変化することもここ数年知られていたが、プロペシアのフィナステリド含有量はProscarの5分の1であるため、プロペシアに同じ作用があるかどうかはわかっていなかった。
今回の研究では、男性型脱毛症の40〜60歳の男性355人にプロペシアまた
はプラセボ(偽薬)のいずれかを投与し、PSA値の変化を調べた。48週間後、プロペシア服用群では、PSA値が40〜49歳で40%、50〜60歳では50%減少した。一方、プラセボ群ではPSA値に平均13%の増大がみられたという。
この知見から、長期間プロペシアを使用している男性については、Proscarの場合と同じようにPSA値の読み方を調整する必要があるという。測定値を2倍するという方法もあるが、完全とはいえない。毎年のPSA値に注目し、数値が0.3上昇した場合は、生検を検討する必要があるという。なお、プロペシアによってPSA値が変化する理由については、前立腺に作用するテストステロンが阻害されることによるものだとD Amico博士は説明している。