厳しい時代には女児のほうが強い
力強さでは男性が勝るかもしれないが、数の上では女性が上回っている。その理由を示す研究結果が、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」1月23/27日号に掲載された。
米カリフォルニア大学バークレー校(UCB)の公衆衛生学教授Ralph Catalano氏の研究グループが、1751〜1912年のスウェーデンの系図記録を調べたところ、ストレスのかかる時代には、男児の胎児や胚が自然流産となる傾向が強いことが示された。
Catalano氏は「ほとんどの種で、雄は雌を獲得するために競い合う。また、雌は丈夫な雄を好む」と述べる。食べ物が少ない時期に、弱い雄は雌を獲得する競争には勝てない。弱くなる可能性のある男児を産めば、母親の遺伝子が受け継がれる可能性が低くなる。そこで、ストレスの多い時期にはより女児を産むようになるという論理につながるのだ。事実、米国の同時多発テロ後と、日本の阪神淡路大震災後で女児の比率が上がったことが明らかにされている。
また今回の研究によると、多くの女児が誕生する厳しい時期に生まれた男児は、他の時代で生まれた場合に比較して4カ月長命だという。Catalano氏は「一個人としてみれば、驚くほどではないかも知れないが、何十万人として考えれば、かなりの長さといえるだろう」と述べている。これは、生きる可能性もあった弱い胎児をストレスが淘汰し、強い子供による新しい世代が作られることを示唆している。
しかしCatalano氏は、この知見によって妊婦や小児への対応が変わることはないと述べている。