運動前のコーヒーはレッドカード
運動前のコーヒーは心臓によくないらしい。運動の前にカフェインを摂取すると、運動中の心筋への血流供給量の増加が制限されるという知見が医学誌「Journal of the American College of Cardiology」1月17日号で報告された。
スイス、チューリヒ大学病院統合人間生理学センターのPhilipp A. Kaufmann博士らは、いつもコーヒーを飲む18人の健康な若者を対象に、サイクリングマシンに乗る前と乗った後の、心臓自身の活動を維持するための心筋への血流供給量を、高機能PETスキャンで測定した。
被験者は実験36時間前からコーヒー摂取を止めており、10人は通常の環境で、8人は高度1,500フィート(約4,600メートル)の状況を模した実験室で運動を行った。さらに両群共、コーヒー2杯分に相当するカフェイン200mgを含んだ錠剤を服用した後に、同じテストを行った。
その結果、運動していないときには、カフェインは心筋への血流供給に影響を与えなかったが、カフェイン錠剤服用後では服用前に比べ、運動直後の測定で心筋への血流供給量が通常気圧で22%低下、高度が高い環境では39%低下した。
運動すると酸素供給量の増加に適合するため、心筋への血流が増加する。しかし、カフェインは血管壁の特定の受容体を阻害し、運動に応じて血管を広げるという正常な情報伝達プロセスを妨げる可能性をKaufmann博士らは考える。コーヒー摂取は健常者では臨床的問題はないが、冠動脈疾患のように心筋を養う冠動脈への血流が減っている人の場合、特に運動前や高度の高い場所へ行く前では、安全性に疑問がもたれるという。
カフェインを刺激剤と考える人もいるが、心筋への血流供給をみると、運動に役に立つとはいえない。覚醒し注意力が増すという点で、脳への刺激剤であるかもしれないが、Kaufmann博士は選手が運動の前にカフェインを摂取することは勧められないと述べている。